増加運転資金とは?必要になるケースや資金調達の方法を徹底解説!

税務・財務コンサルティング
time2020年1月31日
増加運転資金とは?必要になるケースや資金調達の方法を徹底解説!

増加運転資金とは?

増加運転資金とは、経常の経営状態では必要ないが、何かが増加することによって必要となる資金のことを指します。

この増加運転資金を詳しく理解するには、まずは運転資金について最低限の知識が必要になってきます。そこで「なぜ運転資金調達が必要になるのか」その原理から説明することにします。この記事では、運転資金のメカニズムがイメージしやすい「製造業」を例に説明していきます。

製造業の場合では、まず原材料を仕入れます。原材料は生産工程に入り生産、加工され、仕掛品(製造途中の製品、半製品)を経て製品となります。そして製品を包装したりラベルを貼ったりして商品とし、一定の在庫期間を経て取引先へ販売します。

販売されれば売上になりますが、通常は売掛金として一定期間を待ち、振込入金や受取手形として回収することになります。受取手形の場合、期日まで待って銀行で取立てするか、緊急の場合は手形割引で資金化することになります。また、場合によっては裏書きして他社に渡すこともあります。

このようにして回収した資金で次の原材料を購入し、製造して・・と同じ過程を繰り返します。この仕入→製造→販売→売上回収→仕入といったお金の流れを「運転資金の循環活動」と呼びます。

例えば、運転資金の中でも代表的な経常運転資金はよく次のような式で表現されますが、これは運転資金の循環活動をイメージすると理解しやすくなります。

経常運転資金=売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産−仕入債権(買掛金+支払手形)

この式と運転資金の循環活動を合わせて考えてみると、売上を現金化する前に、どうしても支払いが必要になるというタイムラグが生じることから、運転資金(経常運転資金)が必要になるケースがあると想像できるかと思います。

つまり売掛金や受取手形はいつか手にできるお金ですが、実際に現金として受け取るまでには時間がかかります。これが売上債権です。棚卸資産つまり在庫も、資産ではあっても現金ではありません。これに対し、仕入の支払期限はどうしても先に来てしまい、これが仕入債権になります。

まとめると「売上はあるがまだ現金化できない、しかし仕入代金はすぐに払わなければいけない」ここで必要なのが経常運転資金というわけです。

そしてこの経常運転資金は「普通の状態(つまり経常)で必要になる」お金であるのに対して、「何かが増加することで必要になる」のが増加運転資金です。

増加運転資金が必要になる理由

増加運転資金が必要となるケースについて見ていきましょう。

まずは、経常運転資金が増加すると売上の増加に直結します。売上が増加するから運転資金も増加するというのは、自動車の運転スピードを上げると燃料が多く必要になることにも似ています。

ほかにも増加運転資金が必要になる理由には下記のようなものがあります。

・売上債権サイトの長期化や売掛金の未回収
・仕入債権サイトの短期化
・不良在庫の発生

いきなり難しくなりましたが、1つずつわかりやすく説明していきましょう。

売上債権サイトの長期化や売掛金の未回収

売上債権サイトが延長するとはどのような状態でしょうか?サイトとは期間、所要時間という意味です。

売掛金は一般的に、月末締めの翌月払いなど1ヶ月程度が一般的です。しかし売掛金がなかなか回収できないと、お金をもらえるまでの期間が長期化し、運転資金がより多く必要になります。このように、普通の状態である経常運転資金を超過して必要になる運転資金が増加運転資金です。

これ以外にも、今まで翌月振込だったものが2ヶ月後に延長された、振込が3ヶ月の受取手形を6ヶ月の手形にされたなど、すべて売上債権サイトの長期化で増加運転資金が必要になってきます。

さらに、支払われるはずの売掛金が未回収に終わった場合にも増加運転資金が必要になります。売掛金が未回収に終わると本来入るはずのお金が入らなくなるので、別途資金を作る必要があるということです。

このように、売上債権サイトの長期化や売掛金の未回収などによって、増加運転資金が必要になるケースがあります。

仕入債権サイトの短期化

仕入債権は売上債権の逆で、今後支払う予定のある金額だと考えて見てください。例えば、今までは仕入してから2ヶ月後に振込で支払いしていたのに、翌月払いに変更されてしまうと、仕入債権サイトが短縮されて増加運転資金が必要になってしまいます。

このほかにも、今までは6ヶ月先の支払手形で払っていたのに3ヶ月先の手形にさせられた場合も同様です。

特に、取引先から支払手形の期日を短くしてほしいと要望があった場合は、あなたの会社の信用度が低下した、あるいは相手先の業況が不振で、銀行から期日の短い手形でないと割り引きできないと言われている可能性があり、いずれにしても注意が必要です。

不良在庫の発生

商品が売れずダブついてしまったり、あるいはクレームで返品された場合などには不良在庫を抱えてしまうことがあります。そうなると、どうしても増加運転資金が必要になってしまいます。ここで、運転資金の循環活動を思い出してみましょう。

仕入→製造→販売→売上回収という運転資金の循環が、不良在庫を抱えることで流れが悪くなってしまいます。血栓ができて血液の流れが悪くなるように、在庫が捌(さば)けず残ってしまうと、文字通り仕入と製造で費やしたお金が「死に金」になり、「デッドストック」になってしまうからです。

増加運転資金を作るには?

「増加運転資金」という言葉自体は、本来ポジティブで前向きなイメージのはずです。「売上が増加したから必要な運転資金も増加した、だから資金調達が必要だ」という理由であれば、胸を張って銀行に融資相談することができるでしょう。

もちろんその場合は、増収のエビデンス、例えば新規の契約書や受注書、請求書といった資料を揃える必要がありますが、その準備をした上で相談にいけば、銀行も前向きに対応してくれます。このような増収を原因とした増加運転資金の相談は、取引する銀行や担当する銀行員としても、歓迎すべき前向きな融資案件と捉えてくれます。

その反面、同じ増加運転資金を調達するにも、言い方やロジックには十分に気をつけなくてはなりません。

例えば、増加運転資金が必要になったのが売上債権サイトの長期化が原因の場合、取引相手もしくはあなたの会社が業績不振で、相手とのパワーバランスの差から泣く泣くサイト長期化を呑んだとしましょう。

この事実を正直に言ってしまったら、審査はまず通りません。仕入債権サイトの短期化が原因の場合も同様です。この場合に使ってはいけない言葉、禁句があります。

「資金が不足した」
「資金がショートした」

このフレーズを使ったらほぼNGだと思ってください。銀行は「不足」「ショート」という言葉には、かなり敏感でネガティブなイメージを抱きます。

「支払条件を見直し、やむなく売掛サイト延長を呑んだが、交換条件として相手に単価を5%アップしてもらった」など、「転んでもただでは起きない姿勢」を金融機関にアピールすることが、増加運転資金の融資を前向きに検討してもらえるためのポイントです。

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