経常運転資金とは?基本的な考え方や計算式を徹底解説!

税務・財務コンサルティング
time2020年1月31日
経常運転資金とは?基本的な考え方や計算式を徹底解説!

経常運転資金とは?

経常運転資金とは、簡単に言えば、事業を継続して運営していくために必要な資金のことです。経理上では、掛取引において生ずる資金の回収期間と、支払い期間のズレに起因する未収金であると定義できます。

具体的には、回収期間と支払期間にズレがなければ、受け取った売上代金で必要な経費を賄うことができますが、一般的には回収期間よりも支払期間の方が早いため、必要な経費を売上代金で賄うことができません。そのため、借入金などによって必要な資金を捻出せざるを得ないのです。

こうした資金需要を経常運転資金と呼び、さらに借入期間が1年を超えるかどうかで短期資金や長期資金、資金使途によって決算資金やつなぎ資金など、さまざまに分類されます。

 

経常運転資金の計算方法は?

経常運転資金は以下の算式で計算します。

経常運転資金=(売掛金+受取手形+棚卸資産)−(買掛金+支払手形)

一例として、1日あたりの売上を表す日商を200万円と仮定し、売掛債権(売掛金+受取手形)が3,000万円、棚卸資産が1,000万円、仕入債権(買掛金+支払手形)が2,000万円と仮定すると、運転資金がいくらになるか、経常運転資金に関わるそれぞれの項目の計算方法を見てみましょう。

経常運転資金
=3,000万円(売掛金+受取手形)+1,000万円(棚卸資産)−2,000万円(買掛金+支払手形)
=2,000万円

以上の結果、必要な経常運転資金は2,000万円であることがわかります。売掛金や受取手形は、期日が到来すれば回収されます。

また、棚卸資産はいずれ売上となり現金化されますが、それらの期日が到来する前に買掛金や支払手形の支払いがある場合は、その分の資金をあらかじめ用意しておかなければなりません。その用意しておくべき金額が、この例では2,000万円ということになります。

売掛金

売掛金とは、商品の販売やサービスの提供の対価として、一定期間経過後に代金を回収する取り決めになっている債権のことです。言いかえれば、後払いで販売した掛取引の代金のことで、経常運転資金を算出する際には下記算式で計算します。

売掛金=平均月商×売掛期間

なお、企業の営業活動ではない取引、例えば所有している建物などを売却して1年以内に回収する予定の代金などは、未収入金として売掛金とは区別します。

受取手形

受取手形とは、支払いが取り決め通りなされなかった場合などに、法的な根拠となる債権証書のことです。振出人にとっては、取引先に安心感を与えながら支払期日を延長することができる決済方法と言え、経常運転資金を算出する際には下記算式で計算します。

受取手形=平均月商×受取手形回収率×受取手形期間

なお、手形を振り出すためには、金融機関に信用がなければ開設が難しい「当座預金口座」を開設する必要がある反面、手形の所有者は例え第三者でも現金に替えることができます。

棚卸資産

棚卸資産とは、商品などを仕入れたものの、まだ販売できておらず在庫として残っているものをいいます。いずれ売却して利益を得ることのできる財産であり、経常運転資金を算出する際には下記算式で計算します。

棚卸資産=平均月商×売上原価率×在庫期間

棚卸資産は企業にとって重要な財産の一つであり、実際に存在する在庫が帳簿と一致していることと、販売価額が下落していないかどうかがポイントと言えます。

買掛金

買掛金とは、原材料や商品を掛け取引で仕入れ、代金を一定期間経過後に支払う取り決めになっている債務のことです。

その都度精算していては、自社や取引先の双方で事務負担が増加してしまうことから、取引と経理処理を簡単にするための決済方法と言え、経常運転資金を算出する際には下記算式で計算します。

買掛金=平均月商×売上原価率×買掛期間

売上の回収期間が長く、支払いの期間が短ければ資金繰りが悪化してしまうことに注意が必要です。

支払手形

支払手形とは、通常の営業取引において商品やサービスなどの提供を受けた対価として、取引先に代金支払いのために振り出した手形債務のことをいいます。

一定の期日に一定の金額を支払うことを振出人が直接約束する約束手形と、第三者に振出人が支払いを委託する為替手形があり、経常運転資金を算出する際には下記算式で計算します。

支払手形=平均月商×売上原価率×支払手形発行率×支払手形期間

一定の金額の支払いを目的とした、有価証券の一つといっても良いでしょう。

経常運転資金を減らすための考え方

ここまででもお伝えしたように、経常運転資金は、売上債権の回収期間と債務の支払い期間のズレにより生ずる未収金に他なりません。売上債権の回収期間よりも債務の支払期間の方が前倒しになっていることにより、その期間のズレを補うつなぎ資金といった性質です。

そのため、経常運転資金が増大すると、帳簿上は利益が計上されていても資金が不足して、いわゆる黒字倒産を起こしかねません。それでは、経常運転資金を減らすためにはどのようにすれば良いのでしょうか。

支払いと受け取りの時間のズレをなくす

経常運転資金を減らすポイントは、支払期間を伸ばし、入金サイトを短くし、無駄な在庫を持たないことです。

例えば債務の支払期間が毎月末締めの翌月15日払いなら、毎月末締めの翌月末日に変更してもらいましょう。同様に、売上債権の回収期間を短縮することも経常転資金の減少につながります。

そうはいってもいずれも相手あってのことなので、どちらも困難であれば、需要の少ない商品の仕入を減らして無駄な在庫を圧縮することでも経常運転資金を減少できます。

売掛金を減らす

売上債権の回収期間を短縮したくても、取引先に強く申し入れできない場合もあるでしょう。そんなときは、保有している売掛金を売却することで決済予定日よりも前に現金化できる、債権買取型の「ファクタリング」を利用することも一案です。

手順としては、ファクタリング事業者に債権を売却する契約を締結後、先に売却代金を受け取り、後日売掛金を回収後、ファクタリング事業者へ送金するという流れが一般的です。ファクタリング事業者への手数料はかかりますが、うまく利用することで売掛債権の早期現金化が可能になります。

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